1.活動目標
当センターの活動目標は、「人間中心アプローチ(C.R.ロジャーズ)」と仏教(特に真宗)との交流から生まれ成長しつつある新しいアプローチ、「D-pca」による「育ち合う人間関係」に満たされた場を提供することにあります。
同時にそれらのあり方を研究する場でもあります。(5.参照)
2.「育ち合う人間関係」
「育ち合う人間関係」。これは西光義敞先生の言葉です。一つは「人間中心アプローチ(PCA)」との交流から生まれてきたものです。その場に、「 一致」、「無条件の肯定的配慮」、「共感的理解」という言葉であらわされる心理的風土が醸し出されているときそこが育ち合う場になっていきます。その「育ち」は「援助者」-「被援助者」というように一方的に固定されるものではなく、お互いの中に起きていきます。とはいえ、当面は「世話人」と呼ばれる人からこれは提供される必要はあります。
さらに、これはPCAとの交流からのみ生まれてきたものでもなく、仏教(仏法)との交流の中から深く醸し出されてきているものでもあります。仏法は、深い人間理解の智慧を持っています。その深い智慧を尋ね合って行くところからも育ち合う人間関係は生まれてきます。皆が等しく仏から願われている存在なのですから。
現在、以下のような言葉で表わしている心理的風土です。D-pca援助者の目標です。
1. 私(援助者)自身が自身の刻々と変化する気持ちに流れに開かれていることです。「一致」と呼んでいます。私自身がありのままであり、来談者からは援助者が透明に感じられるということです。
2. 私(援助者)は来談された方に目を向けます。来談者のあらゆる気持ちをそのまま大事にしようとします。「無条件の肯定的配慮」と呼んでいます。
3.「共感的理解」です。私(援助者)は来談された方の内的世界、感覚、気持ち、考えを大事にし、それを内面から理解しようとし、その理解を伝え、確かめるようにします。「あなたを理解しようとする私がいる
」ということを伝えていくことになります。
さらに、
4. 私はD-pca援助者ですから、その根底に仏法があります。中でも特に阿弥陀仏の誓願が、今まさに私の中に生きていると信知・感得することです。煩悩具足ですから人生の中で戸惑うことは多々あります。しんどいときもありますが、その中で、どこか基盤を持っている。いつもそこに立ち戻らせていただく底がある。このように表現されるかなと思います。同時に
来談された方も等しく弥陀仏の願いの中にあるとも感得します。 私(D-pca援助者)の「一致」の原点はここにあります。これらの態度を「法・自己一致」、「法・無条件の肯定的配慮」と呼ぶことにしています。
これを「二重の配慮」と呼びます。
真摯で、どこか暖かい、安心してくつろげる。そのような雰囲気なのではないかと思います。
3.「育つ」とは
ここで、「育つ」ということについてです。これはD-pcaの重要な探求課題であります。今後も実践を深めながら探求していく必要がありますが、目下仮説的に次のように押さえておきたいと思います。
仏教、「人間中心アプローチ 」双方の共通点は、自己探求にあると思います。これを「育つ」という言葉で表しています。さて、その「育ち」ですが二重の意味があります。ここが、双方の違いでもあります。1つは、「一致」、「自己指示的態度の拡大(自由)」です。もう1つは、真宗で呼び習わされてきた「お育て」です。
まず、第1の「一致」、「自己指示的態度の拡大(自由)」です。これは、自己の中に流れている感情、これは刻一刻変化していますが、その流れを否定せずに気づき、それに沿っていくことです。それによって外から動かされていた自分に気づき、自分本来の中から生まれてくる流れに沿って動いていく態度が拡大していきます。自由な心境です。これは健康な心の状態と大きく関係しています。同時にこれは他の人との有意義な人間関係を作る礎になります。
人にはそれぞれ人生の困難を工夫して乗り越えていく力があります。それぞれのやり方で自ら工夫して人生を歩んでいるものです。大事なことはそういう自分に気づいていくことです。そのことによってさらに自分自身の人生の道筋を見いだしていく力が「育って」いくことになるのだと思います。
さらに第2の「お育て」です。これは仏法を求めてみたいという主体的関心が起き、それを鏡(教法)として自ら求道・聴聞していくことによってはじめて私たちの身に起きて来る「育ち」です。「お育て」は真宗で昔から言われてきた言葉です。味わい深い言葉です。仏法(特に弥陀の誓願)の働きにふれてこちらの本当のありように気づかされ、
その本願力に出遇う身にさせていただくということです。仏陀の世界と衆生の世界があまりにも違うために仏陀のイメージが届かない。それをあらゆる手段を講じて衆生に働きかけてそれを受け取れるような力量に育て上げていく力が仏法にはあり、さらに窮極のめざめ(廻心)に至らしめる大きな働きがあります。ここにいたって始めて私たちは大きな眼をいただき今まで見えてこなかったものが見えてきます。
この場にはこれらの「育つ」が二重に存在しています。第2の育ちは出世間的育ち、第1の育ちは人間界における世間的育ちとも言えます。この方向の違う両者が自分の中で出遇う時、揺れながらも揺れない、苦しみながらもそこに巻き込まれない広い心境に至ります。
このようにD-pcaでは従来のカウンセリング・グループだけでは得られない根底の自分自身に気づかされますし、さらにこれまた従来の聴聞法座だけでは得られない具体的な聴聞をすることが出来ることでしょう。深い意味での「育ち合う場」です。 これは釈尊の最後の説法「自燈明、法燈明」につながることだと思っています。
これらの「育つ」は前述しました「育ち合う人間関係」が一定期間継続することによって促進されていきます。また、それを提供する人も相互作用として育たされていきます。
人間すべてにその力が内在しているのです。
4.活動の三本柱
我々の活動は、大きく3つの柱から成り立っています。
1. 育ち合う場の提供
個人、家族、小グループを対象にした「育ち合う場」の提供、場作りの為に必要な心理的風土を学習する場の提供をします。 これは、宗教、思想、信条の相違を問わず、関心のある方ならどなたでもご利用できます。仏教を知らせるために行う場でもありません。
なお、ここでいう「育ち合う場」は、カウンセリングやエンカウンターグループに近いものですがそれらとはまた一味違ったものをめざしています。いずれも体験的な学びや交流の場です。
また、当センター独自の使命として仏法を鏡として究極の自己を知る体験的な場の提供 があります。関心がある方、出てこられた方はどうぞご利用下さい。
2.研究活動
D-pcaについて探求を行っていきます。仏教そのものの探求、人間中心アプローチの探求、そして、それらの交流から生まれる新しいアプローチのあり方について実践を通した研究を行っていきます。
3.国際交流
交通手段の発達はもとより情報技術の発達により地球が村のようになっていく時代です。 仏教も世界的な広がりを見せています。D-pcaセンターにはパーソンセンタード
・アプローチと仏教を共通項とした国際的な人のつながりがあります。
活動の三本柱とその活動内容
1.育ち合う場の提供
・個人・家族・小グループ
*カウンセリング
*ワイガヤ リトリートグループ
・D-pcaの集い
・研修活動
*育ち合う人間関係(PCA)を学ぶ集い
*スーパービジョン
2.研究活動
・D-pca研究会
3.国際交流
・国際エンカウンターグループ
5.D-pca:「仏法を基底にした人間中心アプローチ」
これらを総合してD-pca:「仏法を基底にした人間中心アプローチ)」と呼ぶことにしています。英語名は、"Dharma-based
person-centered approach"、略して"D-pca" です。
「人間中心アプローチ(person-centered approach:PCA)」、「心理社会療法」、そして「仏教(特に真宗)」との交流から生まれるつつある新しいアプローチです。「心とからだ」、「人と環境(社会関係)とその相互作用」、「自由」というような言葉で表される「人間の全体性」に焦点を当て、さらに、「転迷開悟」、「抜苦与楽」という根源的な自分自身への目ざめをも扱える広く深いアプローチであります。